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漢方薬 遠志(キオグッド ワスノン アレデル)
はじめに
遠志についての質問があったので調べてみた。
イトヒメハギの根であり、生薬の英語名はRadix Polygalae
日本では自生していない、産地は主に中国。
日本では去痰、動悸、健忘、不眠、咳嗽、多痰、乳腺炎、腫れ物等、幅広い目的で使われていて、健忘は数ある効能のひとつという感じ。
しかし、中国では、伝統的な漢方薬として昔から認知機能、記憶喪失、痴呆症の改善を目的として使われている。
遠志の成分
キサントン
- ランサリン
- 1,3,7-トリヒドロキシ-2-メトキシキサントン
- オンジキサントンII
- 1,2,3,6,7-ペンタメトキシキサントン
サッカライドエステル
- シビリコースA7
- ポリガラトシドA
- ポリガラトシドC
- 3′-O-3,4,5-トリメトキシシンナモイル-6-O-4-メトキシベンゾイルスクロース
- テヌイポリスチドC
フラボノイド
- 5,3′-ジヒドロキシ-7,4′-ジメトキシフラボノ –
- ラムネチン3-O-β-D-グルコピラノシド
トリテルペノイド
- プレセネゲニン(テネイゲニン)
- テヌイフォリン
フェニルプロパノイド
- 3,4,5-トリメトキシケイ皮酸
ベンゾフェノン配糖体
- シビリフェノンA
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24702811
遠志の効果
イトヒメハギの根から抽出されたサポニンPolygala tenuifolia(テヌイフォリア) tenuifolin (テヌイフォリン)とpolygala saponins(ポリガラサポニン)が多くの研究対象となっている。
アミロイドβ産生の減少
www.mdpi.com/1420-3049/17/3/3524
テヌイフォリンがβセレクターゼの阻害によりアミロイドβの産生を減少させる。
in vivoで抽出されたテヌイフォリンがアミロイドβの分泌を減少させることができる。おそらくβサイトAPP切断酵素の阻害によるものであり、アミロイドβの分泌阻害ではない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19208093
テヌイフォリンは、PC12細胞内にて、アミロイドβ25-35誘導注入によるアポトーシスを引き起こしたマウスに対して神経保護効果を持ち、認知障害を改善した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25444865
ノルアドレナリン・ドーパミンの増加
テヌイフォリンがマウスの海馬におけるノルアドレナリン、ドーパミンを増加させる。セロトニンの増加は見られなかった。また皮質上のアセチルコリンエステラーゼの活性を低下させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18289838
鎮静作用
GABA活性
遠志由来のテヌイフォリンは、コリン作動性NREM睡眠を促進するニューロンc-Fos陽性率を増加させる。座髄腔(LC)、腹側視索前領域(VLPO)、Pontomesphalic tegmental area(PPT)領域のノルアドレナリンを有意に減少させ、VLPO、LC、周辺領域のGABA濃度を上昇させ、LDT、PPTのアセチルコリン濃度を増加させた。
テヌイフォリンの睡眠増強効果はGABAの活性と、ノルアドレナリンの阻害による。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27912882
鎮静・睡眠作用
遠志に含まれるポリガラサポニンが鎮静、催眠薬の効果をもつ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/206457
神経保護作用
海馬細胞の増殖
海馬細胞の抗酸化作用
BDNFの活性
この2つの成分は組み合わせによって、CREB-BDNFシグナル伝達経路経路を相乗的に活性化させ神経保護作用をおよぼす。
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血管新生の阻害
テヌイフォリン混合物由来のセネガサポニンがin vivoにて血管新生の阻害作用をもつ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21042868
遠志 臨床研究
二重盲検、プラセボ 遠志抽出物を成人健常者へ投与 K-CVLT(言語記憶評価テスト)テストでプラセボ群より有意に得点が増加した。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304394009002985?via%3Dihub
摂取
低い吸収率
ラットへのテヌイフォリンの経口投与 生体吸収率は(0.83±0.28%)と非常に低い。全身への循環吸収が乏しく、肝臓、腎臓、心臓により高い濃度が見出された。一定量のテヌイフォリンがBBBへ通過する。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0731708513003087?via%3Dihub
摂取方法
基本は抑制系漢方のようだが、症状の鎮静作用と、活性作用の両方を含む漢方。
経口での生体吸収率は悪い。それを回避するために空腹時に摂取する方法もあるのだが、胃腸を刺激する成分とそれを緩和する成分両方ともが遠志に含まれており、それが空腹時に摂取したとき、どのような反応を見せるかよくわからない。
空腹時に摂取して胃腸に異変を感じるようであれば、食後に摂取するとかいった感じだろうか。
摂取量は1~5g
少量投与から始める。
購入先
遠志を成分としたサプリメントが各メーカーから販売されているようだ。
キオグッド ロート製薬 1ヶ月分 約5400円
アレデル クラシエ 1ヶ月分 約4500円
ワスノン 小林製薬 1ヶ月分 約3800円
こういう単品の漢方であれば、調合する必要もないので漢方薬局で500gの粉末を買って自分で計量して飲むのが一番安くつく方法だと思う。煎じる手間がかかりはするが。
中屋彦十郎薬局
www.kanpoyaku-nakaya.com/onji.html
百花園 漢方薬局
www.hyakkaen-kanpou.com/hyakkaen23/onjimatu.htm